2026年6月 良かった映像10選

Balming Tiger - Oui

Director:Lee Suho

すげえ…… 絶句……

不気味さとかグロさとか下品さを、ダークコミカルな世界観に落とし込んでいる、思いっきりの良さ。脈絡がありそうななさそうな絶妙なシーンつなぎ。荒廃感、チープさをデザインに取り込んだ、プロダクションデザインの抜群なセンス。全部好みです。

映像的にも、アップで映したりせめてカメラの速度を落としたくなったりするところをスルーしたり、ズームとか使ってカット切り替えたくなりそうなところを、ベーシックなポン寄り繋ぎで繋いだり、かなり禁欲的。この淡々とした感じが、全体的なダークコミカルな世界観、ナンセンスな世界観を強調しています。

Cocoon

A film by Daixuan Yuan(129mlwater)/Sound Design:Daixuan Yuan

これも、すげえ…… 最高です。

グラフィックデザイン・色使い・ディテール・繊細なキャラクターデザイン・ストーリテリング…… 特に、絵柄。この絵柄を見せつけられるだけで、圧倒されます。ダークなストーリーとの相性も抜群。

この方の作家性というか、濃厚な世界観に浸る4分でした。CalArtsでの卒業制作とのことです。

Memory System - Ambient Swim

Adult Swim/Directed by Shane Dering

めちゃくちゃキュレーションというか、シーンに対する解像度が高くて、さすがAdult Swimだなと思った。作家のコンピレーションの形態としてめちゃくちゃいいなって思ってます。

作業用BGM、Y2K Futurism、ジャングル・ドラムンベース、PS2的な画質・UI、そしてアニメーション。なんとなく関係があるし相性がよさそうなものがぎゅっと集まってます。これだけ作家が参加していて、各々のアニメーションがいいのはもちろんですが、それがしっかりと一つの線を描くように、コンピレーションの一つのフィルムとして立ち上がっているのがいいな~と思いました。

コンピレーションって、作家を並べるだけじゃなくて、並べて一つのものを作り出すとか、シーンとか空気を描き出すとか、そういう側面も大きいと思うので、そういうコンピレーションとして評価しています。

give the girl a gun

A short animated film / music video by Jena Quach

映像的には、一部だけ動いたり、拡大縮小したり、めちゃくちゃシンプルなつくりなんだけど、独特な絵柄と相まって、いい! 好き! ってなる。これは、何というか、テクニカルというより、腕力ですね、腕力のある映像。完成された、画のスタイル・世界観と、シンプルな映像効果が相まって、腕力がありつつ、脱力している、不思議な映像体験でした。

DOPE - 初音ミク

動画:No Name

やっぱグラフィックデザインとしてきまっている、モーショングラフィックスMVを見ると気持ちがいいですね。

イラストの青を基調としつつ、ライム・イエロー・パープル、時には赤を混ぜていく、色の感覚。抜けるような白。画面を縦横に心地よく走る書きなぐったような線。全体にちりばめられるテクスチャ。

全部センスが良くて、惚れ惚れしますね。

Spacemoth - Flower Memory

Directed by Maryam Qudus and Ginger Fierstein

「POOR THINGS」でも思ったんですけど、広角レンズの黒味を出すの、個人的に斬新だな、と思って注目しているんですよね。

映像って、特に実写の映像って、普通四角じゃないですか。センサー/フィルムの四角。でも、通常隠すだろう黒味を見せちゃって、レンズの円を明らかにしてしまう。そして、それが、四角の映像の中に配置される。

これって、光がレンズを通してセンサーに映るという光学現象と、円という幾何が重なっている、有り体に言えば、実写とグラフィックデザインのものすごくきれいな混ぜ合わせ方な気がします。

本作は、グラフィックデザイン的に置かれた円と、広角レンズで円に形作られた実写映像が重ね合わされて、次元を行き来しながら、何を見ているかというよりは「乗る」みたいなグルーブ感まで連れて行ってくれます。

あと、上に載ってる幾何的な映像のVHS的なテクスチャ感が肝だな~と思います。実写をグラフィックに寄せるだけじゃなく、グラフィックに実写的なテクスチャを加えることで、両者を一体にしている。

シンプルに見えて、練られた映像だなって思いました。

円が素子になる、円環を感じさせるようなラストもいいですね。

brkfstblend - In Session

Director:Masaki Ueda

海外のライブMVみたいな、綺麗なロケーション、プロダクションデザイン、グレーディングだと思ったら、多分日本発の映像で、驚きました。最近こういう感覚多いです、リッチなシネマトグラフィーが渡来している。

しかもワンカット。最初、夕焼けかと思っていた空の白みが、長く見ているうちにどんどん明るくなって、朝焼けだと途中で気づくのが、ちょっと嬉しい気持ちになりました。ワンカットならではの、時間をそのまま感じる体験です。

フィクショナリ - 原口沙輔, Talich Helfen, norimaro, 花譜, 梓川

tilta float operator, colorlist, motion designer:藤白詩集

さて、連続してワンカットのパフォーマンスMVです。楽曲も好きだったんですが、映像でも楽曲でも共通して、インターネットとかサブカルみたいな要素と、それと対比してベーシックだったりトラディショナルだったりする要素を融合している点が素晴らしいと思いました。

やっぱり、個人的にグッときたのは、いつ花譜と梓川が登場するんだろうと思わせておいて、いざ、ぬいぐるみで登場するという…… それまで非常にベーシックなパフォーマンスMVなのに、ぬいが登場することで、インターネットカルチャーとかユーモアとか、ちょっとMV自体の枠が揺らぐ、真面目で形式ばったものじゃなく、受容しやすくなる、でも、芯は変わらない、みたいな。その塩梅が絶妙で、インターネットカルチャーとトラディショナル・ベーシックな表現を繋ぐ、両者の往来を実現する良いMVだと思います。

Haruomi Hosono - 終わりの季節 / Owari no Kisetsu (HOCHONO HOUSE)

Direction & Animation:Nevil Bernard / Produced by Kiko Mizuhara

Haruomi Hosono - 薔薇と野獣 / Bara to Yaju (HOSONO HOUSE)

Visualizer by Shayna Strype / Produced by Kiko Mizuhara

知り合いから教えてもらいました。

Nevil Bernardはパリ在住のアニメーション作家、Shayna Strypeはニューヨーク在住のアニメーション作家だそう。

終わりの季節・薔薇と野獣という細野晴臣の名曲に、このかわいい〜アニメーションを当てるプロデューサーのキュレーションのセンスが素晴らしいと思いました。良い意味で裏切られた感じがして。え、これオフィシャルなの!? みたいな。

でも、いざ見てみると、このちょっと影のあるゆるさ、かわいさと、楽曲が一体になって、ノスタルジックな、東京、みたいなものを(自分は当時を知らないのに)想像してしまいます。

Ambient Swimを見て、日本でこんなにキュレーションにセンスのあるコンピレーションアニメーションMVできるかな〜と思っていたら、細野晴臣がやっていたのですね…… 光り輝いています。