10/2022
Personal Work
Short Film
Direction

 己の中に沈み込み、苦しみと共に拾って来た石が、ある瞬間自我を持ち、自分とは違う存在となる。そして自分を掬い上げ、想像もしていない場所へ連れていく。生きづらさを抱えつつも、創作と共に歩みを進めてきた作者のマイルストーン的作品。

 本作は、2021年に制作した未完の作品「沼」を原作とし、大幅に再構成、再制作した作品である。過去に救われる行為と、捨てようとしていたものを思う一度作り直す決断を重ね合わせ、副題を「All That I Can't Leave Behind(私が置き去りにできないものの全て)」とした。

 技術面においては、Unreal Engineを用いることで、リアリティのある映像をトライアンドエラーのコストを抑えながら制作することができた。自作のバーチャルプロダクションも同時に用い、ライブアクションの要素も作品に取り入れている。それらの試みが、不気味な現実感を作品に与えている。ゲームの世界と映像の世界は、生まれは違えども、今、二つの世界は今までにないほど近付いていると感じている。今作では、ゲームエンジンによるリアルタイムでボーダーレスな3D表現を土台とし、その土台の上でどれだけ自由で大胆で、質の高いものが作れるのかということに挑戦した。