2026年9月 良かった映像10選
きゃりーぱみゅぱみゅ - KURU KURU HARAJUKU
Director:田向潤(Jun Tamukai)
田向潤監督最強!!!!!
これやっちゃうの、本当に最強です。1カットで等速で回るだけのカメラワークに、ボリュメトリックで撮ったきゃりーを音に合わせて配置するという、超シンプルかつボールドな映像を成立させちゃってる。
あと、個人的にグッときたのが、歌詞の出方です。1文字ずつ、パーキングの空みたいな看板に歌詞が表示されるという突飛さも魅力ですが、ドローンがずっとカメラの方を向いてるっていう。そこだけ、演出上の都合を許しているような感じがあるところ、すごく嬉しい。ガチガチに意図とか作為で固めるわけでもなく、映像の中の世界の摂理みたいなのに任せきりもせず、絶妙なバランス感で世界観の中で映像として演出しきる。その堂々とした佇まいに、自分はただうっとりするだけです。
春野 - DAYBYE
Direction & Animation:改リ
Coloring Assistants:Kuranezumi / Shinri Yoshimoto
超高品質、温泉旅行Vログ風アニメMV。
Vlogだからって、だらだら映像を繋げてるわけじゃなくて、めちゃくちゃちゃんと編集している。まったりからの、少しずつ動き出す、これ2番もやってからの、ラスサビで転々とさせる、みたいなリズムがしっかりしているので、内容がVlogなのに間延びしている感じは全くないです。
上下歌詞にライム色を入れているのと、ややグリーンがかったグレーディング、かえるちゃんが合ってて、実写・アニメ・グラフィックが混在してるのにちゃんと見やすくてすごいです。
構成とかもめっちゃいいです。「取るに足らないぜ」で歌うの、そこで初めて主人公が口を開いて歌うのが、心動かされます。旅行に行く開放感というか解脱感? みたいなのと、「君以外は取るに足らないぜ」という歌詞のフォーカスが、そこで初めてスッと合うような気がして、心がほろっとする。
のんびり旅行で心が少し息を吹き返すみたいな、そんなムードが中心にあって、それが染み渡ります。
温泉行きたい;;
雨のなかのダイバー / Divers in the Rain
Directed by Priit Pärn & Olga Pärn
Production:Eesti Joonisfilm
※リンクは本編『Divers in the Rain』からのExcerpt。本編は約23分の短編アニメーション。
船の救助に行く準備に散々時間かけて、やっと船が出たと思ったら定時で引き返すの、ほんと笑った。それとは別に乗客が助かってんのも意味わからんし。タバコの着ぐるみを着てる人がタバコを着ぐるみの中に落としちゃって燃えるのも爆笑でした。
話が少しずれるんですが、いくつかの種類の素材をランダムに並べ替えた時に、同じ素材が並ぶことがある。でも、それは、自分が求めている“ランダム”ではない、みたいなことってありませんか。
“ランダム”と“不条理”とか“ナンセンス”の間には、そういった感覚があるような気がします。一見意味とかを放棄しているようで、実際はその逆に、この隣にこれがあることが生み出す、奇妙な化学反応に敏感になり、モチーフを選び抜いている。その結果、ある種の気まずいような時間が延々と流れ、水風呂みたいに、いつの間にかその中にいることが心地よくなってくるような、そんな感じ!
時間が流れ、時には同じ出来事が繰り返される、ながーい時間の中で、だんだん不安にも愉快にもなってくる、その自分が置かれる不安定さは、プリート・パルンの大きな特徴に思えました。
長谷川白紙, ハハとヘアピンズ - 窒息日記
Director:齊藤公太郎(Kotaro Saito)
これぞ時間を持つメディアのなせる技! という感じですよ。等速のアークカメラワークの中で、モチーフに当てる光の質を切り替えて、異なるムードをつなぎ合わせる。後半ではモチーフも切り替える。その、つなぎ合わせの間で、軽妙な気持ちに少しずつなっていきます。
モチーフが無機質なものじゃなくて、植物なのがいいな〜 息をしている。少し息ができる気がする。窒息日記なのにね。
キタニタツヤ - 遺書 / Final Draft
Director:志賀匠
ほら、私は志賀監督が好きなので、期待が高すぎたのか、最初見た時は、ふーん、なるほど…… とすんとしてしまったのですが、何回も見て、その良さに気づきます。
ティロリミックスの第3弾も、最初はピンとこなかったけど、後でまた見たくなって、2回目で心にきたもんなあ。
自分には天の上の存在すぎて、志賀さんの作品の良さを言語化することは難しいんですが、なんというか、余裕? 余裕がある気がします。何度も繰り返されるカットと、1回しか出てこないカットと、2回出てくるカットがあって、その内容と配置で、ビートみたいなものが生まれて、最後ふわっとする、って感じ。志賀さんの作品は、グラフィックデザインに対する深い造詣からくる独特のビジュアルスタイルも魅力の一つですが、個人的に大好きな理由は、そこなんだよな。心がふわっとして、ちょっと寂しくなるところ。
余裕…… 押し付けがましくない? 1カットで伝えようとしない? そもそも伝えようとしていることを悟られない? みたいな感じですね。
解決しなさ、みたいなのが残ってるんだよな。ドラスティックな解決とか変化じゃなくて、ほんの少しの変化とか心の持ちようみたいなところにフォーカスが行って終わるから、いつも余韻がある。今回も、大きな目で見た主人公の浮いている感じとか創作の苦しさとか、そこが大きく変わるわけじゃないんだけど、最後のカットに向けて、その中でもなんかなってるんですよね。ティロリミックス第2弾の終わりの、全部頭の中の話で部屋の中でハイになってるだけだった、というオチと、一つのコメントで救われる(救われる様子は描かないで、コメントが来ただけで終わる)のにも、おんなじ感情を持つ。
『我々は宇宙人』本予告
企画・監督・脚本・絵コンテ・編集:門脇康平
企画・製作・制作:NOTHING NEW
今これを読んでいて、『我々は宇宙人』を観ていない方は、ブラウザバックしてすぐに『我々は宇宙人』を観に行ってください。
IVNIT - Chrome
MV Director:Sodapong
2D VFX Supervisor / VFX / Motion Graphic / DI:Tranquillo
なんか、これも、余裕がある、という感想です。
この余裕は、志賀さんの余裕とは、似てるような気もしますが、多分違います。
でも、カットの切り替えのタイミングを拍とずらしている所とか、こんなにカットが切り替わっているのに音楽に乗りながらスムーズに、すんなり鑑賞することができる所とか。あとは、同じモチーフ、異なるモチーフの見せる順番を巧みに操っている所とか、共通点はありそうです。
違うところは、さっき語った、心が浮くような余韻があるというところですかね、この映像には余韻はあんまりないような気がします。
なんかKPOPのMVを見て思うけど、本当に、ダンスとシチュエーションとを、超強力な編集力でつなぎ合わせて、アイドル達を魅力的に見せるという感じですよね、そこに焦点が合っているから、押し付けがましさがない。そういう意味の余裕かもしれません。
きゃりーぱみゅぱみゅ - Focus Focus
Director:Masaki Watanabe
Director of Photography:Shuho Teramura
Animation:Mami Sonokawa
Production:P.I.C.S.
いやカッコ良すぎる。
実写映像をグラフィックデザインの形式に強引に押し込みつつ、それが見事に成立している稀有なMVです。
全編通して沈んだ青を基調としているところ、正方形のフレームの中にグラフィカルに、しかも極めて幾何学的なグラフィックの中に、実写映像(実写映像というか、コラージュ元の素材ですよね)が組み込まれているところ、視力検査というものを中心としつつ、グラフィックやモチーフとしてそのテーマを膨らませて、それが全部見事に合わさって完成されている所。マジで、すごいです、、、、
⟗
制作:subetekakonoseidesu
なんかかっこいい。かっこいい映像がいっぱい転がっているチャンネルだ。ザクザクだ。
自分も最近ドット絵とかディザ表現とかやったのですが、めちゃくちゃ細い線の表現とかできないんですよね。でも、この映像は、点滅しちゃうくらい細い線とか、白とほんの少しのグレーとか、このディザ表現の中で、めちゃくちゃ微細なコントロールをしているのがいいなと思いました。
西郷・R・いろり(CV: 名取さな)- ノラリクラリズム
監督・制作:Rei Kurashima
癒し〜〜〜〜 かわいい〜〜〜〜 ほっこり〜〜〜〜
キャラ表現・画面のルックもそうなんだけど、シチュエーションの選び方とか見せ方がめっちゃいいなと思いました。お鍋に浸かってるとか、ターンテーブルの上に乗って一緒に回っているとか。見せ方も、キュッと心を掴まれる見せ方(顔アップからシチュエーションがわかるとか)。
また押し付けがましさがないという話なんですが、このMVの中心にあるのは、かわいさじゃないですよね。ゆるさ、とか、生活、みたいなものを中心に置いていて、その結果、見手がかわいいという感情になる、という、その辺も本当にお上手です。
めっちゃ小物大事ですよね、このMV。生活感のなかの癒しを描くときに、その生活感や地に足がついている感じを担保してる気がする。
シチュエーションの妙でしょうか。シチュエーションや動作の組み立てていき方かも。
Nick Ward - Jenny
Music Video:Nick Ward / Charles Buxton-Leslie
1カット目から心掴まれた。絵に描いた雲をアップで写してるんですけど、それだけで、なんか、ナンセンスな作品だってわかる。箱庭感。この空は偽物ですよ、という。ナンセンス、アラカルト、でも、ダークユーモアとか軽妙さみたいなのが芯にある映像大好き人間なので。
ダークユーモアなのに、見手に笑ってもらう、みたいなときに重要なのは、過度に演出しないことじゃないでしょうか。このMVでも、基本FIXにしていて、観客を半分は冷静にさせておくという。その冷静さとぶっ飛んだ目の前にある像の摩擦を、見手が解消しようとするとき、不安とか笑いとか、不安定な感情を呼び起こせるんだと思います。プリート・パルンにも通じそうです。
Light Assembly
Video Direction:Daihei Shibata
Music:Cornelius
Creative Direction:Ichiro Iwasaki
Video Production:WOW inc.
※SIGMA 65周年(65 years of Innovation)の映像。
めっちゃかっこいいです。SIGMA、こう来るか、という。ちょっとグランジなテクスチャーがありつつ、めちゃくちゃディテールのあるグラフィックで押し切られました。
Aiobahn feat. 9Lana - letter
Animation:えとちや
ノスタルジア………… 子供のころ。疎遠になった友人。公園の中の、延々と繰り返される遊び。子供の頃に感じる箱庭感。
あとは、映像と実写組み合わせ系だけど、結構実写の現像が大事そうです。
アニメ『スティール・ボール・ラン ジョジョの奇妙な冒険』ノンクレジットオープニング映像 - Kroi「SPIN」
Opening Animation:神風動画
Opening Theme:Kroi「SPIN」
3Dアニメーションと手描きの融合が半端ない。
止め絵だけじゃあもうどっちか判別つかないくらいに技術が向上していて驚きました。動きでかろうじてわかる、しかも、動きもかなり手描きアニメの文脈に適応していて、気持ちいい。
その分、本当に手描きと思われる部分で、人間の筆圧とか、絵の味みたいなのがさらに強調されています。豊かな表情。
ダイナミックに動く3Dアニメーションと、表情豊かな手描きの止め絵、このコントラストが、非常に魅力的でした。
グルグル動くカメラと止め絵が気持ちいいのは、単に動静の対比というよりは、肩透かしというか、抜き? みたいな効果ですよね。ダイナミックな絵の連続の中に、パッと止まるところがあると、肩透かしされたような印象に残る感じがある。くすりとした笑いになったり。