今日の良い映像(2026年5月9日)
Max Cooper - The Shape Of Memory
Official Video by Factory Fifteen
やられた。『Mine or Yours (Bella Boo Remix)』観た時と似た感覚です。過去自分がつくった『フレンドコード』のMVでやりたかったことを、100倍うまくやられた感じがある。というか純粋に、こうやればよかったのか、という勉強になる。
この映像の肝は四つあると思っていて、それぞれ「背景が黒であること」「(映像の解像度に耐えられる)複雑なジオメトリがあり、適切にシェーディングされていること」「前進するカメラの動き」「音に合わせた点滅・配列」です。
最初に黒背景にややジオメトリが見える状態でスタートして、それが広がっていくんですが、この最初の状態、とても大事ですよね。映像としての前提をつくっている。
完全に黒だったり、一色の画面って、コンピューターを介してつくられる映像ならでは、って感じがします。After Effectsでも何でも、最初には黒の画面がある、そこから映像がつくられていく。 このシークエンスは自分には、これがコンピューターグラフィックスである、という宣言に見えました。写真のように見えるけど、実は、ジオメトリをCGで描写しているんだ、ということが最初の1秒でわかる。しかも背景の黒を舞台装置として使うことで。シンプルかつ機能的な導入です。
次の話なんですが、しっかり画面の中で解像度を担保できるだけ、複雑さがジオメトリにあり、シェーディングでディテールがつくられていますね。ガウシアンスプラッティングをあえて点群状態で見せるというの、別に新しいわけじゃないけど、新鮮に見えます。パーティクルが、ふわふわと漂ったり、最後にふわっと消えていったり、そういうのを混ぜつつも、まるっとひとつのヴィジュアルスタイルになってて、そこも上手い。
点群を突っ切っていくリニアなカメラワークも、黒背景と同様に舞台装置として、映像の前提・ルールを作り出すのに機能していますね。これが、映像のルールとして要件と、点群を面白く見せるという要件を上手い具合に満たしています。どっちから思いつけばいいもんなんだろう?
音に合わせた点滅や配列の操作も、簡単なものではあるんですが、音をしっかり聞いて、オーディオヴィジュアル的にしっかりのれる感じがあって良いです。バリエーションもいろいろあって、じわーっと広がっていく感じ、エレメントで切り分けて点々と散りばめる感じ、深度で切り分けて並べて表示・非表示させていく感じ、スケールが違うもの(反転含め)を切り替える感じなどなど、多彩です。
あ、これ、今気付いたんですけど、1枚の写真からガウシアンスプラッティングにしてるんだ(後に概要欄読んだらちゃんと書いてありました)。1枚の写真たちからここまで世界観を拡張させるって、凄みが増しますね。そんで、明度がある程度低い点を消す(Thresholdみたいな)操作もしてますね。これが、さっき言った黒背景と相まって、いい味出しています。三次元の写真だと思っていたものが急にデータヴィジュアリゼーションになる驚きが随所に現れている。
線形なカメラワーク、点滅(表示非表示)とか配列(コピーアンドペースト)、スケール(反転)、閾値…… 全部、ザ・コンピューターって感じの操作ですよね。やっぱり、これはコンピューターグラフィックスなんだ、というのをアピールしているというか、明らかにその観点から作られた映像です。
ガウシアンスプラッティングという、実物とコンピューターグラフィックスを仲介する手法、その質感であるこの点群の粒々を、一見単純なコンピューターの操作を適切に組み合わせることによって、一貫したヴィジュアルスタイル、そしてその先の音楽との関係にまで繋げて、一つの感情として浮かび上がらせる。お見事です。 プロダクションは、BAFTA、エミー賞受賞歴のある映像制作会社、Factory Fifteenです。